兄王毒日記 番外編
最終試験くじらの考察

超難解な世界観を持つこの作品、フルコンプするまでは全く訳が分からず、
「くじら?、ああ、アレって美味いよね」
ってな感じでボケ切る事さえ出来ない有様だったんですが、一応兄王様なりに納得の行く解釈にたどり着きました
まぁ実際にはフルコンプした後にかなり考えましたが・・・
かなり強引な解釈をしている点もあるんですが、皆さんの参考になれば幸いと思い、発表させていただきます
この作品のキモである”世界観”を解明する為に先行体験版であるprogressiveの内容も含んでいて当然ネタバレ全開
また、あくまでも推測であり、断定する物ではありませんのでので予めご了承下さい



世界の定義

この作品の難しいところは”世界の定義”が全くわからない状態で、不可思議な現象が頻発しながらシナリオが進む点にある
よって、まずこの世界のがどういった世界なのかを明らかにしておく
手始めに、時間軸でこの作品の中の出来事を整理すると

1 紗絵と出会う

2 例の花火大会での事故

3 数年後 丘で紗絵と再開

4 紗絵を失ったと思い込いこみ心を閉ざす(この後主人公は引越し、紗絵も大きな病院へ転院)

5 数年後 紗絵主人公と同じ町へ

6 くじらの世界に入る(ゲームのスタート地点)

7 三つの鍵を手に入れる

8 さえルート(ここで記憶を取り戻し現実世界に復帰)

9 学園に紗絵がやってくる(エンディング)


となる
”1”〜”3”は回想シーンで登場、”4”はprogressiveでしか出てこない、”5”に至っては完全な推測である
ポイントとしてはまず”4”
意外と見落としている人が多いと思うのだが主人公は安武から引っ越している、これは回想シーンでの”3”の場面で”3年間住んだこの町から離れる”とちゃんと出てくる
主人公が心を閉じてしまうのもこの時、ただし主人公が作ったのは真っ白に塗りつぶされた世界でしかなく、くじらの世界とは異なる
また、コレも勘違いしてる人が多いと思うが、主人公が心を閉ざしたのは花火大会の時の事故のせいではない

次に”5””6”
主人公が心を閉ざしてから、くじらの世界に入るまでには数年間の開きがある
オマケシナリオの内容から、今主人公たちが住んでいるのは安武ではないということが判るので、主人公が再度引越しをしていない以上、紗絵の方が主人公の住んでいる町にやってきたとしか考えられない
病気の治療の為に、より設備の整った別の病院に移って来た等、ありがちな設定と思われる
また、紗絵が休学中ながら同じ学校に在籍していたことから、主人公の住む町に移ってきてからくじらの世界を作り出すまでにも多少の時間差があると思われる
転院の甲斐あって多少状態が良くなったということかもしれない

最後に”7”、この部分はループしている、つーかそうでないと話が成り立たない
一旦エンディングを迎えた後は、再びスタート地点から繰り返しているのだろう
心の中だけの出来事なので、どうにでもなる


ぶっちゃけた話、この作品のシナリオが進む世界の大半は夢の世界
くじらが空に浮いている世界、アレは全て夢の世界である
便宜上あの世界を”くじらの世界”、実際の世界を”実世界”と呼ぶことにする


この夢の世界を作ったのは紗絵である
オマケシナリオで紗絵のセリフに「人の夢に入ってこないで」というものがある事からも紗絵が作り出したと考えるのが無難
ただし、作ったのは真っ白になった主人公の心の中なので、主人公だと言えなくもない
場所が場所だけに、基本的に主人公の都合の良いように話は進み、主人公が困った時に導く以外くじらの少女には何も出来ない
こう考えるとくじらの少女の「私一人では何も出来ないの」というセリフと一致するのではないだろうか
また、たまにくじらがいなくなる瞬間があるが、progressiveの内容から紗絵は一日のほぼ全てを寝て過ごしている事から、あの瞬間は紗絵が覚醒していて主人公がくじらの世界の呪縛から解放されているのではないかという推論が成り立つと思う


まとめると、この世界は
”紗絵”が、真っ白になった主人公の心の中に、主人公を真実へと導くために作った夢の世界という事になる
なぜそんな力を持っているのかに関しては、そこはやはり”愛の力”だろう
都合が良すぎる?、左様、この世に都合の悪い愛など存在しないのである(笑)
そもそも、そんなことはこの作品に限った事ではないので問題無いはずだ


******************************
設定面でどうしても辻褄あわせの出来ないことが一つある
先ほど、”主人公が住んでいるのは安武ではない”と書いた、それはオマケシナリオの内容からほぼ間違いないはずである
そもそも再び安武に引っ越したと推測できる要素が無い(ゲームのスタート時には春香が存在するため、あの時点では既にくじらの世界の中)
主人公が実世界に復帰してから、次項で説明するヒロインたちのベースになったと思われる人物と出会って(正しくは再会?)いるが、主人公が住んでいるのは安武ではないのだから、彼女達もまた安武の住人ではないことになるハズ
・・・なのだが、progressiveでは主人公は過去に”安武”で彼女達に出会っているのである
(本編でも幼少期に出会っているが、それが安武であると判断できる要素はどこにもない)
コレだけは、どんなに考えても辻褄合わせの出来る要素が見つからないので、設定変更だと思いたい・・・



キャラの位置付け

この作品に出てくるヒロインは、一部を除き主人公の心の一面を反映したものになっている
これはくじらの少女のセリフ「見せたかったのはあなたのココロ」でも示されいる
主人公の今現在の状態と心の内に秘めている願望に正面から向き合い、閉ざしていた記憶を引き出す事を意味しているのだろう
完全なオマケキャラを除くと”さえ”以外で攻略できるキャラは5人
このうち3人が重要な役割を持っており、真実の扉を開く為の三つの鍵を持つ(?)
くじらの少女のセリフ
あの人に、優しさをあげよう。 あの人が、いつまでも人を思い遣れるように
あの人に、暖かさをあげよう。 あの人が、冷たい人にならないように
あの人に、強さをあげよう。 あの人が、くじけないように
から、三つの鍵とは”優しさ”・”暖かさ”・”強さ”の三つと思われる
これが世界の危機を救う勇者だと”愛”と”勇気”と”希望”が鍵であり、さらには五つのオーブだったり、四つのクリスタルだったりを集めることになるのだが、主人公は世界の危機とは無関係な引き篭もり野郎なので必要なのは鍵だけである

では簡単に各キャラの解説をしていこう

榛原胡桃

実世界でも主人公のクラスメート、progressiveでは過去に安武で会っているが本編では設定変更されていると思われる
このキャラが表しているのは今を変えたい気持ちと、覚えていることの大切さ辺りか
父親云々や軍がどうとかの話は、単に話しを面白くする為で、あまりというか全く関係無い
世界の再構成がどうのこうのといったくじらの役割に関しても、このシナリオ中だけの設定で、大した意味は持っていないと思われる
強いて言えば、後半の設定が”天空の城ラピュタ”に酷似しており、主人公の中にあった世界観を反映しているのかも知れない
このルートでは苦しみながらも自分変えて行く胡桃を通し、三つの鍵の一つ”強さ”を手に入れる

このシナリオで意味不明なのは、途中で胡桃が入れ替わったようなシーンがあること
理由が全く想像できない、お手上げである・・・
それともう一つ、春香の「負けないぜよ」に対しての受け答え、「漁師!?、しかも土佐生まれ」の意味が不明
土佐生まれなのはわかるが、どこから”漁師”が出てきたのか?、この作品最大の謎である・・・


御影仁菜

実世界では1度会った事がある程度、、progressiveでは過去に安武で会っているが本編では設定変更されていると思われる
ネコミミ、スク水、メイド服、さらには眼鏡とこの作品の萌えを一身に背負ったキャラ
余談だが、兄王様は眼鏡は余り好きではないし、スク水に至ってははっきりと”萎え”の要素である。ま、どうでもいい話だが・・・
このキャラが表しているのは過去に縛られた自分と、取り返しのつかないことはない・あきらめなければ夢は叶うと信じたい気持ちといったところ
この話でも軍がどうとか、くじらのかけらの正体といったものは特に意味は無い
胡桃シナリオと同じく、何か良く似た物語があるのかも知れないが、調べた範囲ではそれらしいものは見つけられなかった
このルートでは、人の温もりから拒絶されていた仁菜に温もりを与える事で、鍵の一つ”暖かさ”を手に入れる

このシナリオでの不明点は幼少期の回想シーン
どう考えても、一度父親が父親が家に帰ってきて(ピーーー)な展開になった事があるようにしか取れないのだが、仁菜の口からは語られない


夢前春香

実世界には存在しない
誰かに必要とされたい、誰かに優しくしたい想いを象徴している
見かけ上は主人公が死別した姉の代わりに自分を守る存在として求めた存在という事になっているが、その姉は存在を忘れていた所から、実際には深層意識にある紗絵を表しているのではないかと思われる
へっぽこ地図という共通点もあり、春香がぬいぐるみを生み出すのはウサギのメモくんに由来するものである可能性もある
また、progressiveの内容から紗絵はほぼ寝たきり状態に近いため、同級生であっても紗絵の方が年上である可能性は高い
よって姉などというものは実世界には存在しない(死んだからという意味ではない)
紗絵の身代わりとしての存在であるため、くじらの少女の分身でもある
これは、時々春香の人格がくじらの少女と入れ変わったような発言をすることや、くじらの少女の身代わり?発言からも推測できる
シナリオとしては、身代わりとしての春香では無く、”春香”としての存在を受け入れる事で春香が存在する世界を作り上げるエンディングを迎えていると取れるが、これはつまり紗絵との決別(自分が傷つく事)を意味しているのだろう
このルートでは、自分が傷つくことをいとわず優しさを注ぐ春香を通し、鍵の一つ”優しさ”を手に入れる


茂木美佳・茂木優香

実世界でも学園の先輩、、progressiveでは過去に安武で会っているが本編では幼少期に会った設定は出てこない
くじらの世界と同じほどかはわからないが金持ちの令嬢であることは確か
優香の方は、美佳の「茂木家の跡取という立場から逃げ出したい」気持ちが作り出した”完璧な姉”で、実世界には存在しない
このことは美佳シナリオで「本当は美佳ちゃんも気づいてるでしょ?、私の存在の意味を。くじらが空に浮いている意味を」という言葉を残して消えてしまう事から推測出来る
美香シナリオのラストシーンで消えてしまったはずの優香が存在しているのは、美佳の望む世界の為には、やはり身代わりとなって茂木家を継ぐ存在が必要だったということなのだろう
このキャラは他のキャラと違いくじらの少女の作り上げた存在ではなく、美佳本人の強い想いから生まれたものではないかと思う
くじらの少女の夢の世界もそうなのだが、人の心の中でこんなことが出来るのは主人公の心が真っ白で何も無い状態であるため、強い思念の影響を受けてしまうからではないかと考えられる
優香シナリオの方は、はっきり言って数合わせとか、ついでの色が濃い・・・
多分、その通りだと思う(^_^;)


以上5人のうち、胡桃・仁菜・春香が真実の扉を開く鍵を持っているキャラ
美佳・優香に関しては鍵とは関係ないものの、上記の5人のシナリオはある共通点を持っている
それはそらを泳ぐ”くじら”
この5人のシナリオには、絶対に”くじら”の存在が必要不可欠なのだ
一見、物語には全く関係していないように思えるキャラもいるのだが、くじらなくして彼女たちのエンディングはありえないのである
理由は後ほど”くじらの存在理由”で説明するので、今はそう覚えておいて欲しい
とりあえず残りのキャラの説明を先に済ませてしまう


名雲さえ・名雲紗絵・くじらの少女

非常にややこしいが、”紗絵”は主人公が子供の頃に安武で出会っていた少女
回想シーンで出てくるあのコと、くじらの少女シナリオで最後に出てくるあのコで、実世界の存在

”さえ”はくじらの世界で主人公の隣の席に座る少女、実際に攻略することになるのはこっち
主人公の封印した記憶の中にある”紗絵”が投影された存在

”くじらの少女”は”紗絵”そのものだろう
主人公を導き守るために自らの夢の中に現れた存在、某うぐぅな食い逃げ少女みたいなものか
ただし、ヤツは物質界にマテリアライズ、物理的接触を図っているので、より高位の術者であると思われる(そんなことはどうでもいい)
決して強引に方向を決めるようなことはしないが、自分が作り出した世界ではあっても、宿主である主人公の影響が強いこと、そして主人公が自分の意思でたどり着かないと意味が無いからだろう

ま、最終的には全て同一人物である(^_^;)
三つの鍵を手に入れ、真実の扉を開くことで攻略できるようになる
ちなみに上記の3人をクリアした後に最初から始めた時に、一番最初に出てくる
「この子の事を知っている」
「知らない」

の選択肢が扉(笑)、もちろん「知っている」を選ぶと開いたことになる


ついでなのでサブキャラも解説


咲倉ゆん

真実へと導く”白い少女”に対し、くじらの世界にとどまらせようとする”黒い少女”としての存在なのではないかと思う
だから普段着もくじらの少女の白いワンピースに対して、黒い服を着ているのではないかと・・・
胡桃シナリオで悪役側に付きながらも、最後には胡桃たちを助けてくれるのは、主人公自身がそれ(この世界にとどまる事)が良くないことだと薄々ながら気が付いているからか?
紗絵の夢の中なのにこんなに都合の悪いキャラが存在するのは、主人公の夢から覚めたくない気持ち、あるいは光あるところには必ず影が差すという意味かも知れない
兄王様としては声的に攻略出来て欲しいキャラだが、残念ながら攻略は不可
ただBADエンドに登場するので、ある意味攻略出来ると言えなくもない・・・のか?


金井誠一郎

あんまり良くわからん、シナリオ的にもあまり意味はない
多分主人公の「自分がこうありたい」と思う理想像なのではないかと思う
単にくじらの世界を楽しいものにする役割を持っているのかもしれない


以上でキャラの設定に関する説明はおしまい
世界の定義と各キャラの位置付けさえ判れば、殆どの謎は解けると思う



くじらの存在理由

では最後に残った、この作品最大の謎”くじら”についての説明

いきなり結論から言います
くじらとは、”この世界が真実の世界では無い事の象徴”である
もちろん、くじらを存在させているのは”紗絵”であり”くじらの少女”
なぜ”くじら”なのかは、progressiveでのピノキオの話(ピノキオとゼペットじいさんはくじらの腹の中で再会する)や、水族館でのくじらの親子に関係していると思う
紗絵にとっての”再会”の象徴なのだろう
しかし、主人公も言っていたように”それが何であるか”に大した意味は無い
ありえない存在=この世界は正しくない という事の象徴なのである

先ほど「この5人のシナリオには、絶対に”くじら”の存在が必要不可欠」と言った
それは、この5人はくじらの世界の住人(ベースとなった人物は実世界にいるが)だからだ
つまり、この5人の物語はくじらのいる世界でしかありえない話なのである

そして、主人公がその存在に疑問を抱き、「この世界は間違っている」と気付く事
それこそが主人公がクリアしなくてはならない”最終試験”なのではないだろうか
これが”くじら”の存在理由、そして”最終試験くじら”というタイトルの意味であると思われる



といった所ですが、納得してもらえたでしょうか?
最初にも言いましたが、あくまでも推測にしか過ぎず、イマイチ説得力に欠けるところがあるかも知れません、つーかたぶんあるでしょう
というよりも、兄王様自身、あの世界観を理解するために無理やりこじつけたところがあるので・・・(^_^;)
もし「ココはこうなんじゃないか?」とか、「だったらココはどういう意味?」とかありましたら遠慮なく御意見、御質問よろしくです

こうしてこじつけながらも世界観がわかると、「結構いい話だったのかも?」って気もしてくるんですけど、PLAY中にそれが伝わらないんじゃなぁ・・・
ダ・カーポのときにも感じたんですが、CIRCUSの作品はプレイヤーの脳内補完に頼る傾向が強い気がします
どうもシナリオライターが、”自分の常識”が世間一般の常識だと勘違いしてるせいなんじゃないかと思えるのですよ
具体的に言うと、ライターにとって”赤くて丸いもの”と言えば”リンゴ”なんですけど、それってのは人によっては”トマト”かもしれないし、中には”アン○ンマンの鼻”なんて人もいるわけですよ
でもそのライターは”赤くて丸い”といえば誰だって”リンゴ”に決まっていると思ってる
だから自分では十分な伏線を張ったつもりでいるけど、プレイヤーには伝わっていない と、そんな感じなんではないかと思います
同人レベルならそれでも構わないんですが、さすがにモノ書きでメシを食ってる人ですからね・・・
いつもテーマとしては良い物を持ってると感じるので、なおさらのこと、もう少し勉強してもらいたいもんです

最後に、総合評価ですが・・・
こうやって考察することに喜びを感じられる人でないと正直オススメしません
サクッとプレイすると何がなんだかサッパリで、全然面白くないです
まあ、キャラはかわいいし、音楽も合っているので気が向いた人だけどうぞってことで



え〜最後まで呼んでくれた方にちょっとしたサービスです
”最終試験くじら”をインストールしたフォルダ内にある、Packフォルダのも一つ中
そこにある”Movie1.pak”と”Movie2.pak”は、拡張子をmpgに変えると、そのままメディアプレイヤー等で再生できます
もちろん拡張子がそのままでも、指定して開けば問題なく再生できますよ
中身は想像どおりのアレですので、”アレ”が好きな人は保存用にいいかもです